通院せず自宅で矯正治療ができるというマウスピース矯正システムについて
近頃、利益最優先、治療の安全性は二の次、と考えていると思われる矯正治療が増えているように思います。
1つ不安要素がとても大きい広告を目にしたので、私の考えをこちらに書かせていただきます。
矯正治療を始めるにあたり、お口の中のスキャン(型取り)をすれば、そのあとは通院なしで、自宅で矯正治療が終了するというものです。
まず、矯正治療前にレントゲン写真を撮影することは常識といいますか、必要不可欠なことですが、この段階が省かれています。
とても危険です。
なぜならレントゲン撮影により、得られる情報は以下のようにあるからです。
1 歯やアゴの骨に疾患がないか見極める。
疾患がある場合、矯正治療に先立ち、まず、治療をしてから歯を動かすようにしないと危険なことがあります。
2過剰歯がないか見極める。
過剰歯といって、骨の中に歯が埋まっていることがあります。無痛のため、レントゲン写真を撮影し、ようやく発見されます。過剰歯がある状態で歯を動かすと健常な歯の根が吸収されてしまうことがあるため、過剰歯を抜くことから始めなければいけませんが、この段階が省かれています。
3親知らずの有無を見極める。
親知らずが埋まっていれば、その親知らずの状態により、矯正の治療方針が変わることが多々あります。
4顎の関節の状態を把握する。
顎関節の形態を矯正治療の治療方針に反映させることがあり、大切な情報です。
5顔やアゴの骨、歯の角度を測定する。
矯正治療の治療方針を決める上で、必須のため、矯正の専門の先生は必ず行います。
レントゲン写真なしで、治療を始めることは大変な危険を伴うため、絶対にお勧めすることはできません。
また矯正治療中に通院をしないとどうなるでしょうか。
1歯はシュミレーション通りに動かないということがマウスピース矯正の基本です。
どんなに技術のある先生でも数ヶ月に一回はチェックしています。
実際にお口の中を見ずに治療が終了するといことは、マウスピース矯正を良心的に行っている先生では一人もいません。
2矯正治療中、歯の移動には危険が伴います。(歯の神経に損傷が起きる、根が短くなる、歯茎が退縮するなど)痛みを伴わずに進行することもあるので、それに対してフォローしてもらうことができません。
3綺麗に並んでいるように見えても、歯が強く当たりすぎていたりした場合、それを調整してもらう必要がありますが、その段階が省かれています。
4良好な噛み合わせかどうかは知識のある歯科医師に確認してもらう必要がありますが、その段階が省かれています。
5矯正治療後にもレントゲンを撮影し、歯の根の状況を把握する必要がありますが、省かれています
矯正治療が豊富なドクター監修ということでしたが、本当かと疑ってしまいます。
矯正の専門のドクターであればいかに危険な治療かがわかりますが、その危険性は一切広告では触れられていませんでした。
患者さんには便利さや安さばかりが印象に残り、思わず始めたくなる内容です。
しかしながら、通院0回で行われる矯正治療によってもたらされる危険はあまりにも大きいと考えています。